高性能光触媒コート膜を開発:物質・材料研究機構/明電舎

 (独)物質・材料研究機構は12月12日、(株)明電舎と共同で有害な硫化水素を分解する高性能光触媒コート膜を開発したと発表した。従来品の30倍以上の速度で硫化水素を分解できるという。
 空気清浄機などに使われる光触媒フィルター、たとえば酸化チタン光触媒フィルターでは、ナノ(10億分の1)mオーダーの粒子径を持つ酸化チタンのスラリーとバインダー(結合剤)とを混合したコート液(塗布液)を作製、これをフィルター基材である多孔質セラミックスに塗布し、熱処理によって固定化する方式で作られる。しかし、こうした方式では、十分な反応面積が確保できず、内部にまで到達する光も少ないために光触媒活性の高い膜ができなかった。
 そこで、バインダー成分にミクロン(1ミクロンは100万分の1m)サイズのアクリルビーズを加え、熱処理過程でアクリルビーズを気化させて、従来より大きなミクロンオーダーの細孔構造をコート膜に形成させる方法を開発した。つまり、多孔質セラミックスに塗布した酸化チタンを含む膜に、紫外線の波長よりも直径の大きな細孔を無数に形成することで、酸化チタンの表面積アップを図ると同時に、塗布膜内部への光の浸透性を高めるようにしたもので、硫化水素の分解速度が従来品比で30倍以上になることを確認した。
 フィルターは、硫化水素などの腐食性ガスの除去を目標に開発されたが、大気中に含まれる種々の有害ガス物質(ホルムアルデヒド、二酸化硫黄、アンモニア、一酸化窒素など)除去の高効率化にも適用できるとし、各種空気浄化装置への応用が期待されている。