(独)産業技術総合研究所は12月13日、動作時の電気抵抗がこれまでで世界最小の大電力用炭化ケイ素半導体素子を開発したと発表した。この素子の通電時の電気抵抗値は1.8mΩcm2(ミリオーム・平方cm)で、現在使われているシリコン製パワー素子の10分の1以下にあたる。
炭化ケイ素素子は、理論的に電気を通した時の抵抗値をシリコン素子より2桁下げられるが、現用のものは理論的限界値よりかなり高い。これまでの製法では1600℃以上の高温熱処理が必要なため、炭化ケイ素表面からケイ素が蒸発して表面が荒れてしまい凹凸が大きくなって電子が流れ難くなり、全体の抵抗値が高くなるからである。
産総研はこれまでに、独自開発した高温熱処理の必要が無い素子構造によって炭化ケイ素素子の動作時抵抗を4.3 mΩcm2にまで下げてきたが今回、その素子構造をこれまでのような炭化ケイ結晶のケイ素原子面ではなく、炭素原子面に作製する技術を開発するのに成功、世界最小の抵抗値を実現した。
こうした成果を踏まえて産総研は、今年7月から(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構からの委託で「パワーエレクトロニクスインバーター基盤化技術開発」プロジェクトを進めている。この素子を家庭用電気機器などに使えば電力損失が少なくなって、使用電力を大幅に削減できると見ている。
No.2006-6
2006年12月11日~2006年12月17日