(国)産業技術総合研究所と東京大学は5月10日、ゴッホや北斎も絵画に用いた青色顔料「プルシアンブルー」が悪臭の原因となるアンモニアを除去する高性能吸着材になることを見出したと発表した。活性炭やイオン交換樹脂などを上回る吸着能を持ち、化学構造の一部を変えることでさらに高性能化できる。悪臭対策だけでなくアンモニアから水素燃料を作る際のアンモニア除去にも有望と期待している。
プルシアンブルーは鉄イオンなどが立体的につながった構造を持ち、内部に約0.5nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)という微細なすき間を持つ。産総研はこのすき間に放射性セシウムを取り込んで回収する技術の開発を進めてきたが、今回は同様の原理をアンモニア除去に利用する検討をした。
実験ではまずプルシアンブルー、さらにプルシアンブルーの鉄イオンの一部をコバルトや銅に置き換えた二種類のプルシアンブルー類似体を作り、それぞれアンモニア吸着能を評価した。
その結果、プルシアンブルーは活性炭のほか、より高い吸着能を持つゼオライトやイオン交換樹脂を上回る性能を示した。1気圧のアンモニア気体中では、プルシアンブルーが1kg当たり211gのアンモニアを吸着した。また銅置換体とコバルト置換体はそれぞれ351g、373gを吸着、ゼオライトやイオン交換樹脂の二倍以上に達した。
一方、アンモニア濃度0.015ppm(ppmは100万分の1)という通常の実験室程度の希薄環境下にプルシアンブルーの薄膜を置く実験では、アンモニア吸着量は時間とともに急増、24時間後に平衡に達した。最終的に吸着したアンモニア量はプルシアンブルー1kg当たり5.1gで、非常に高価なイオン交換樹脂と同程度だった。
プルシアンブルーを細い管に充填して約1ppmのアンモニアを含む空気を通す実験では、空気との接触時間がわずか2ミリ秒であるにもかかわらずアンモニアの96%を、また二種類の置換体も90%以上を除去した。置換体は希薄な酸で洗浄することで繰り返し利用できることも確認した。
今後、吸着剤を粒状体や不織布に織り込む成型技術を利用して、プルシアンブルー担持不織布や水素ステーションに設置できるアンモニア除去技術などを共同開発する企業などを募集し実用化を目指す。