(国)産業技術総合研究所の電池技術研究部門(大阪府池田市)は5月10日、金属イオンと結合する手を持った配位高分子を原料にして、棒状のカーボンナノロッドとリボン状のグラフェンナノリボンの新しい合成法を開発したと発表した。複雑な工程を使わず効率よく合成できるため、キャパシター(コンデンサー)の電極材料への応用など、エネルギー変換と貯蔵に役立つと期待される。
カーボンナノロッドは炭素原子からできたナノメートル(1nmは10億分の1m)サイズの棒状の物質。グラフェンナノリボンは炭素原子でできたシート状のグラフェン(炭素薄膜)が数層集積したリボン状の材料のこと。これまでは電気化学的処理やプラズマエッチングで作成したため、複雑で収率も悪かった。
配位高分子は、多数の金属イオンと有機物質が連結した立体的なジャングルジムに似た構造をしている。これを合成する際にサルチル酸を加えると、ある特定方向の成長だけが押さえられて棒状に伸びる配位高分子が合成できた。さらに不活性気体中の1,000℃で処理すると、棒状の形が保持されたカーボンナノロッドが作られた。
このカーボンナノロッドを水酸化カリウム水溶液中で超音波処理し、不活性気体中で熱処理すると、棒状のグラフェンが解きほぐされてグラフェンナノリボンが生まれた。透過型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などで確認したところ、大量の生産が可能であることがわかった。
通常の化学反応と熱処理以外の複雑な工程が要らず、大きなスケールでの生産ができる。
これまでキャパシターの電極材料に使われてきたミクロポーラスカーボンと、カーボンナノロッド、グラフェンナノリボンの定電流充放電特性を測ったところ、カーボンナノロッドとグラフェンナノリボンが長い時間、充放電ができ、多くのエネルギーを蓄えられる。高効率なエネルギー貯蔵材料としての可能性がある。