筑波大学と北陸先端科学技術大学院大学は4月22日、バイオマス(有機性資源)を利用して世界最高の強度を持つ透明なバイオプラスチックを開発したと発表した。
バイオプラスチックは、CO₂(二酸化炭素)削減とバイオマスの資源化が図れるとして世界的に注目され研究が進んでいる。
しかし、これまでに開発されたバイオプラスチックは、ほとんどが柔軟なポリエステルで、耐熱性や強度が劣り、そのために用途が限られ、主に使い捨て分野で使用されているのが現状。
今回の成果は、その課題に応えるもので、天然には微量にしか存在しないアミノ桂皮酸というシナモン(桂皮)系分子を大腸菌を用いてバイオマス原料から生産する手法を開発、これを光反応と高分子量化によりプラスチック化して世界でも初めてのバイオ由来芳香族ポリアミドを合成した。
研究では、遺伝子工学技術を使ってブドウ糖を原料にしてアミノ桂皮酸を効率的に生産できる組み換え大腸菌を見つけており、いずれの工程も95%を超える変換効率を達成し、微生物のロスがほとんどないことを確認している。
得られるバイオプラスチックは、透明性が極めて良く、透明プラスチックとして広く使われている汎用のポリカーボネートと同等の透明度を示している。
しかも、力学的強度がポリカーボネートの6培にも達する。この強度は、化学の実験などに使われているパイレックスガラスを遥かに超える。
耐熱温度も273℃と高い。
さらに、溶媒で溶かすキャスト法によりフィルム化して透明膜にすることもできる。
原料に使うアミノ桂皮酸は、石油化学でも作れるが、工程数が多くなるので1kg約10万円程度になってしまうが、今回の遺伝子工学の手法を使えば1kg約2千〜4千円でできるといっている。
こうしたことから、工業用プラスチックとして幅広い用途が期待されるとし、両大学の研究チームはレンズやセンサー、フレキシブルディスプレイへの利用をはじめ、自動車、航空機、船舶といった輸送機器に使われるガラス部品をこの新バイオプラスチックに代替する研究を今後進めるとしている。