(国)産業技術総合研究所は4月19日、東京大学、山形大学、田中貴金属工業(株)と共同で、超微細・超高精細な銀配線回路を形成できる新たな印刷技術を開発したと発表した。大面積のフレキシブルなプラスチックフィルムなどの上に、熱処理や真空技術を使うことなく簡便、高速に金属配線パターンを作れる。タッチパネルセンサーへの応用をはじめ、プリンテッドエレクトロニクスの新展開への貢献が期待されるという。
新技術は「表面光反応性ナノメタル印刷」の英語頭文字からスーパーナップ法と名付けられ、以下のようなプロセスから成る。
まず銀配線を印刷する基板をフッ素系ポリマーで表面処理しておく。その上に配線パターンを描いたフォトマスクをかぶせて紫外光を当て、銀ナノ粒子を化学吸着する活性の高い反応性表面パターンを形成する。
ここに、銀ナノ粒子を高濃度に含む銀ナノインクを塗布(コーティング)する。すると反応性表面に銀ナノ粒子が選択的に吸着され、銀ナノ粒子同士の自己融着により銀配線パターンが形成される、という仕組み。
得られた配線は最も細いもので線幅0.8μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m )。これはスクリーン印刷法や通常のインクジェット印刷法の数十倍の精細度に当たる。インクの濃度を変えると厚さを制御でき、インク周縁部が厚くなって配線抵抗値が設計から大きくずれるという問題もない。
この新技術を用いると、薄いプラスチックフィルムを貼り付けるだけでタッチセンサーを作れるほか、プリンテッドエレクトロニクスの必須技術として各種の電子デバイスを印刷法で形成できる、また、金属薄膜パターンの形成技術としての今後の展開も期待できるという。
今回用いた銀ナノインクに含まれる銀ナノ粒子はアルキルアミンという有機物で被覆された粒子で、紫外線照射によって基板表層のフッ素系ポリマー内に生成するカルボキシル基と強く結合し、その後基板表面上に化学吸着された多数の銀ナノ粒子同士の融着が進行する。
山形大学と田中貴金属工業(株)が共同で開発に取り組んでいた銀ナノインクを用いるとこうした現象が起きることが見出され、今回の開発につながったという。田中貴金属は2017年1月に、今回の技術を用いたフレキシブルなタッチパネルセンサーのサンプル出荷を目指しているという。

スーパーナップ法の模式図
(1)紫外光のマスク露光、(2)反応性表面の潜像形成、(3)銀ナノインクのブレードコーティング、(4)銀配線パターンの形成。