(国)産業技術総合研究所は4月18日、海女の血管年齢は同年代の日本人女性よりも10歳以上若いことが明らかになったと発表した。海女の血管年齢の若さには、現在知られている有酸素性運動と血管年齢の若さとの間の関係とは異なるメカニズムが働いていることが予想されることから、今後その解明が若さの維持や疾患の予防に新たに役立つことが期待できるという。
心血管疾患の発症リスクとなる動脈壁の硬さを動脈スティフネスといい、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素性運動を習慣的に行うことにより、加齢に伴う動脈スティフネスの進行を抑制、改善できることが明らかにされている。また、有酸素性運動は呼吸機能の向上をもたらすとされている。
ライフスタイルと動脈スティフネスとの関係などについて研究している産総研のグループは、今回テキサス大学と(株)フクダ電子の協力を得て、三重県志摩・鳥羽地区と千葉県南房総市白浜に在住する、海女121名を含む女性203名(平均年齢65歳)を対象に血管年齢の計測を試みた。
動脈スティフネスは動脈脈波伝播速度と血圧から得られるCAVIという指標で評価し、健常な日本人を対象に作成された「年齢とCAVI値の関係式」を用いて、各人のCAVI値から血管年齢を得た。
203名の女性を①現在海女である女性②有酸素運動を習慣的に行っている女性③運動習慣のない女性―の3群に分けて集計したところ、CAVI値は、運動習慣を有さない群に対して、有酸素性運動を習慣的に行っている群で5.8%、海女では7.4%低い値を示した。CAVI値が小さいほどスティフネスは低く、血管がしなやかであることを示している。
血管年齢を実年齢と比較したところ、有酸素性運動を習慣的に行っている女性は平均で約8歳、海女は平均で約11歳、実年齢よりそれぞれ若いという結果だった。
海女の労働形態は息止め潜水の繰り返しであり、有酸素性運動とは明らかに異なる運動である。海女は水圧の影響を受けて心臓に戻る血液量が増え、心臓が1回収縮したときに送り出される血液量が増える。こうした1回拍出量の大きさなどがしなやかな動脈壁の維持に影響していることが推察されるという。今後こうしたメカニズムを解明し、動脈スティフネスの維持・改善に役立てたいとしている。

血管年齢と実年齢との差の比較
CAVI値から算出した血管年齢と実年齢との差を求めると、現役海女は一般的な日本人女性よりも血管年齢が10歳以上若いことが示唆された。
なお、今回対象とした運動習慣を有さない女性の血管年齢が実年齢よりも若いという結果は、漁村部に住む住民の動脈スティフネスが、農村部に住む住民の動脈スティフネスよりも低値だったという先行研究と一致する。