NIMSデータシートの発行
―さびなどの材料の変化を調べた試験データ集
:物質・材料研究機構(2016年4月7日発表)

 (国)物質・材料研究機構(NIMS)は3月31日付けで、宇宙ロケットや火力発電プラントなどに使われる金属のさびや、長期間の使用による疲労度合いを調べた貴重なデータ集8冊を発行した。

 ハイテク技術などを支える高度な材料も、長期間の間にさび(腐食)が生じ、繰り返し力が加わることで脆弱になり、高温での長時間使用で劣化が早まる。こうした寿命や劣化は、一つ一つの材料による特性や、その使われる環境条件、利用方法などによって様々に様相を変えるという複雑な背景がある。

 より安全と安心が求められる現代社会では、長期的な安全設計を目指すもの造りや保守管理の際に、正確で中立、信頼に足る材料の詳細なデータの整備が必要になっている。データ集は地味だが骨太なデータが蓄積されている。主なデータシートは次の通り。

 「宇宙関連材料強度データシート」は、高温・高圧、極低温、熱衝撃などの過酷な環境で使われる液体ロケットの1段エンジンと2段エンジンの改良設計などに利用され、H2AやH2Bロケットの打ち上げに貢献した。

 「クリープデータシート」には、発電ボイラー用ステンレス鋼管を600~800℃の高温で最長約5年間使用して変形や破断した時の光学顕微鏡組織写真や透過型電子顕微鏡組織写真、析出物の組成分析データなどが記載されている。

 「疲労データシート」は、輸送機器などに使われるアルミ合金に、電磁共振や超音波による試験機で100億サイクルの負荷を与え、疲労特性を調べた。

 「大気腐食データシート」は、超高層ビルなどの構造材料に使われる強靭な炭素鋼に含まれるリンや銅が、鉄の大気腐食にどう影響するかを調べた。内陸の田園環境(つくば)、海浜環境(銚子)、亜熱帯の海浜環境(宮古島)でのそれぞれの10年間の暴露試験後の外観写真、金属組織写真なども掲載した。合金成分の腐食効果のデータは少ない上、公表されたものはほとんどないだけに貴重だ。

詳しくはこちら