食中毒起こす貝毒
―分析用の標準物質を開発
:産業技術総合研究所(2016年4月5日発表)

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頒布が開始される貝毒の認証標準物質
オカダ酸標準液(左)とジノフィシストキシン-1標準液(右)

 (国)産業技術総合研究所は4月5日、激しい下痢を伴う食中毒の原因物質「下痢性貝毒」の毒性を正確に評価するための標準物質を(国)水産研究・教育機構と共同で開発したと発表した。国が定める認証標準物質として6日、委託事業者を通じて頒布する。生産者による出荷管理などで使われてきたマウス毒性試験に代わって、機器による分析手法の普及に役立つと期待している。

 アサリやホタテガイなどの二枚貝は海水中で有毒プランクトンを摂取し、体内に貝毒を蓄積することがある。日本では食中毒を防ぐため、規制値を超える貝毒を持つ貝類の販売は禁止されている。

 研究グループは今回、藻類の大量培養技術と貝毒の精製技術を利用して高純度の貝毒原因物質(オカダ酸とジノフィシストキシン‐1)を製造、それぞれメタノール溶液として調整した。さらに溶液中の原因物質の濃度を、核磁気共鳴を利用した有機化合物の定量分析法で正確に決定、標準物質として開発した。

 分析機器を用いて貝毒を評価する際には、まずこの標準物質を使って分析機器から得られる出力信号と貝毒の濃度の関係を求める。そのうえで評価したい未知の試料を分析機器にかけて得られる信号をもとに、試料中に含まれる貝毒濃度を推定する仕組み。

 日本では貝毒による食中毒を防ぐために規制値を超える貝類の販売は禁止されているほか、生産海域における貝毒の監視や貝毒発生時の出荷についても自主規制が進められている。従来はマウスによる毒性試験が実施されてきたが、動物愛護の観点や成分ごとに毒を検出できるなどの点から、機器分析の導入が求められていた。

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