ゲノム編集技術でニワトリの品種改良に成功
―低アレルゲン性卵の生産に道開く
:産業技術総合研究所(2016年4月6日発表)

 (国)産業技術総合研究所は4月6日、(国)農業・食品産業技術総合研究機構、信州大学の研究グループと共同で、卵白に含まれる強力なアレルゲンであるオボムコイドの遺伝子を欠失したニワトリを開発したと発表した。低アレルゲン性卵の生産に道を開く成果という。

 産総研は、ワクチンやバイオ医薬品などの有用なたんぱく質を鶏卵を使って安価に大量に生産する技術の開発に取り組んでいる。

 研究グループは今回、次世代の品種改良法として注目されているゲノム編集と呼ばれる遺伝子改変技術のうちのクリスパー・キャス9法という手法をニワトリに適用し、アレルゲンのオボムコイドタンパク質を含まない卵の生産が期待されるニワトリを作り出した。

 ゲノム編集により、まず精子や卵子の元になる始原生殖細胞のオボムコイド遺伝子を欠失させ、この細胞をもとに、父方由来のオボムコイド遺伝子を欠失した雌・雄ニワトリ(第1世代)を作り、次に父方、母方両方のオボムコイド遺伝子を欠失した雌・雄ニワトリ(第2世代)を作製した。

 このニワトリは健康上の異常は認められず、野生型と同様に成長を続けているという。

 オボムコイドは卵白中で最もアレルゲン性が強いため、除去技術の開発が試みられてきたが、ゲノム編集技術によりオボムコイドの完全除去にめどが立ったことになり、低アレルゲン性卵の生産に道筋がついたとしている。低アレルゲン性卵は副作用の少ないワクチン生産などに将来応用できると考えられている。

 食材への応用には、ゲノム編集による産物をどのように取り扱うかの社会的な取り決めが不可欠だが、技術的には、オボムコイドを原因とするアレルギー疾患を持つ人が摂取できる食材を作れる可能性が生じたとしている。

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オボムコイド遺伝子を欠失したゲノム編集ニワトリの作製法