筑波大学、(国)産業技術総合研究所、弘前大学、(国)理化学研究所、高輝度光科学研究センターの研究チームは2月13日、DVD記録材料中を原子が瞬間移動する様子を、時間ではピコ秒(1兆分の1秒)レベル、空間的には0.1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)レベルの分解能で実時間観測することに成功したと発表した。原子の移動を伴う相変化応用デバイスの創製などが期待できるという。
■超高速スイッチング相変化デバイスに可能性
この観測は、理研と高輝度光研が共同で建設した強力な極短X線パルスを発生するX線自由電子レーザー光源(SACLA)を用いて実現した。
超短パルスレーザー光を、相変化メモリー用記録材料(ゲルマニウム・アンチモン・テルル単結晶薄膜)に照射し電子励起させて構造変化を引き起こし、これによって生じた原子運動の様子をSACLAのパルスを用いてX線回折撮影した。
電子励起状態における原子の変位は0.1nm以下なので、波長数百nmの通常の可視域レーザーでは捉えられないことから、今回SCALAのサブ・ナノメートルの波長のレーザーを用い、時間分解能1ピコ秒以下で観察した。
その結果、原子の運動は励起直後の数ピコ秒の間は原子の結合が切れて局所的に構造変化するだけだが、20ピコ秒後には温度上昇も加わり、約2ピコmだけ格子面間隔が膨張した新しい構造に変化することが捉えられたという。
今回観測された電子励起によるピコ秒領域の原子の瞬間移動は、相変化メモリー用記録材料における相転移が、これまで考えられてきたナノ秒ではなく、ピコ秒の時間スケールで起こり得ることを強く示唆しており、電子励起を用いた超高速スイッチング相変化デバイスの開発が期待できるという。