(国)理化学研究所は5月12日、高い能力でセルロースを分解するシロアリの腸内微生物群の共生とその働きを調べ、シロアリが腸内微生物によって高効率にエネルギーと栄養を獲得する仕組みを解明することに成功したと発表した。セルロースをバイオマス資源として利用するのに役立つ有用な成果という。
■セルロースのバイオマス資源化に一歩前進
木造家屋などに被害をもたらすシロアリは、森林においては枯れ木を分解する働きをする。シロアリの強力なセルロース分解能力は近年、分解されにくいセルロースをバイオマス資源として有効利用する観点から注目されている。
シロアリのセルロース分解能力は、主に腸内に共生する微生物群によるが、その腸内微生物は、10数種類の原生生物と数百種の細菌から成る複雑な微生物群集であり、詳細の解明は遅れていた。研究チームは今回、原生生物の細胞内に共生する細菌に着目して、その特徴的な働きを調べたり、ゲノムを解析したりした。
その結果、原生生物の細胞内共生細菌はセルロース分解時に副産物として生じる二酸化炭素と水素を使って、シロアリのエネルギー源である酢酸を作り出す機能があることを突き止めた。
また、細胞内共生細菌は、セルロースには乏しい窒素源を空中から窒素固定して獲得し、固定した窒素を栄養価の高いアミノ酸などに変換する機能があることを見出した。
これらの機能は原生生物の代謝と密接に協調することで高い活性を示し、原生生物自身の代謝にも有利に働くことが分かったという。原生生物と細菌が共生関係を進化させることでセルロース資源を有効利用する効率的なシステムがシロアリ腸内に作られてきたと考えられるとしている。

この研究で明らかになった細胞内共生細菌の役割(提供:(国)理化学研究所)