空間放射線量を地図上に表示するシステムを開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は3月5日、多くの市町村がそれぞれのデータ形式で公開している空間放射線量を簡単に統合して地図上に表示できる「放射線量マップシステム」を開発したと発表した。
 IT(情報技術)の専門家が手間とコストをかけて作っている線量マップが一般市民のボランティア協力などで容易に作成できるという。産総研は、近く個人用放射線量計データもマップに簡単に登録できるようにする予定。大量のデータに基づく長期にわたる線量の分布、変化が一目で把握できるようになることから、被ばくリスクの評価、低減などに役立つとしている。
 このシステムは「集合的標準化」と呼ばれる産総研の技術を、データ形式の異なる放射線量データの統合に適用したもの。
 現在、約500の自治体や国の機関が空間線量データを公開しており、測定地点の多い車載線量計のデータを除いてもその数は10万点以上にのぼり、放射線量マップのデータソースとなるファイルは1,000個を超えるという。これらのデータは、フォーマットがPDF、Excelなど様々なだけでなく、表現形式も表(ひょう)だったり箇条書きだったり、同じ表でもデータの並べ方が異なったりするなどばらばら。このため、現在は、ITの専門家が統合化のための高度な作業を行って線量マップを作成している。
 今回開発された放射線量マップシステムは、利用者がパソコンにデータソースを登録し、変換スクリプト(データソースのデータを標準形式に変換するプログラム)を設定すれば、多様なデータ形式が標準化され、時間的、空間的に広範なデータをカバーした放射線量マップが地図上に表示されるという仕組み。
 操作は、ITの専門家でなくても簡単に行え、登録、変換に要する作業時間は要領が分かればほぼ10分以内で済むという。産総研は、ボランティアの操作を念頭にこのシステムを開発した。
 産総研では現在、個人線量計のデータをプライバシーを守りつつ簡単に登録できるスマートフォンなどのPLR(個人生活録)の開発も進めており、7月にPLRを介して放射線量マップシステムに登録する仕組みを作り上げ、9月中にも信頼性を確認する予定という。これらが整うと個人の被ばくリスク管理や健康管理の向上が期待できるとしている。

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