カーボンナノチューブの温度分布、高速観察に成功
:物質材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は8月10日、太さが髪の毛の1千分の1ほどのカーボンナノチューブの温度分布とその変化をnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)レベルの分解能と1千分の1秒単位の高速で観察することに世界で初めて成功したと発表した。次世代電子材料として注目されるカーボンナノチューブを用いた電子デバイスの実現には、金属電極との接合部が高温劣化しないよう高精度の温度測定による評価が不可欠とされている。局所的な温度分布の計測や画像化を可能にした新手法は、その評価法として応用が期待される。
 成功したのは、同機構の国際ナノアーキテクトニクス研究拠点のデミトリー・ゴルバーグ主任研究者らの研究グループ。
 実験では、直径130nmで長さが1千分の3mm程度のナノチューブを用い、中空のチューブの中に655℃以上で固体から気体に直接変化する昇華性の硫化物を満たした。ナノチューブの両端を金などの金属電極に接合、電流を流して硫化物が固体から気体へ変化する様子を透過型電子顕微鏡で観察した。
 その結果、電極との接触が悪いチューブ先端部は、電気抵抗による熱で硫化物が気化、ホットスポットと呼ばれる高温領域の気泡ができた。電流を流し続けると、ナノチューブと電極が均一に接合され、その後ホットスポットはチューブの中央に移動。室温に保たれる電極とホットスポットの位置関係から、チューブ中心は、655℃でチューブ壁は同779℃であること、またナノチューブの長さ方向や断面方向の温度勾配の継続的な観察が可能なことが確認できた。

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硫化物を封入したカーボンナノチューブの電気加熱後の透過電子顕微鏡写真。硫化物の一部が昇華して鋭い針状になっている。実験では、このチューブ内の直径方向の温度分布測定に成功している(提供:物質・材料研究機構)