月周回衛星「かぐや」の後期運用状況を宇宙開発委に報告
:宇宙航空研究開発機構

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月3日、月周回衛星「かぐや」の現在の状況を宇宙開発委員会に報告した。
 それによると、今年10月一杯で定常運用を終えた「かぐや」は11月1日から後期運用に入り、来年3月中旬までは高度100kmの月周回円軌道からガンマ線分光計で元素分布を観測後、さらに低軌道に移行する計画。
 これまでに得た観測データに基づく初期的解析の結果は、海外の科学雑誌にも投稿・受理されており、一部は既に掲載された。最新の掲載、あるいは受理済みの主な論文の概要は、下記の通り。


「クレーター年代学手法」による月裏側の海形成年代の推定:直径200~300mのクレーターも見分けられる分解能の高い地形カメラの画像を基に、月の海形成年代を月面クレーターの個数密度から推定する手法により、これまで30数億年前形成と考えられていた月裏側の「モスクワの海」は東側地域のクレーター個数密度の小ささから、約25億年前の形成と推定された(米国の科学誌「サイエンス」2008年11月7日のオンライン版に掲載)。

世界初の月全球可視近赤外線連続反射スペクトル観測結果:スペクトル・プロファイラー(SP)観測から、月裏側の「ジャクソン・クレーター」の中央丘で波長1.29µm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m)に顕著な吸収を発見。これで、月表面に分布する斜長石には波長1.2~1.3µmに吸収を持つものと持たないものの2種類あることが判明した。

▼同じくSP観測から、月裏側の「チオルコフスキー・クレーター」の中央丘は、これまで考えられていたカンラン石ではなく、輝石と斜長石が混合分布していることが分かった。これにより、これまでの研究ではカンラン石の露出と思われていた他のクレーターの岩相もSPによる再調査が必要と考えられる。

レーザー高度計を使った月極域での日照観測:月の極域では、太陽光がほぼ水平に入射するので、これまでは深いクレーターの底などでは1年を通して陽の当たらない所(永久影)、高い山などでは1年を通して陽が当たる所(永久日照)があると考えられていた。しかし、今回、レーザー高度計で得た初の極地形データから、[1]永久影は存在するが永久日照は存在しない、[2]緯度85度を超える月極域での最大日照率は、北極で89%(地球の日数にして324日)、南極で86%(同314日)であると算出された。


(以上3件は、いずれも米国地球物理学会誌「ゲオフィジカル・リサーチ・レターズ」に投稿、受理済み)

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