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粉末化食品に新食感素材開発―フードロス削減に貢献も:農業・食品産業技術総合研究機構

(2021年10月4日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は10月4日、ココナッツ果汁を発酵させたゲル状食品「ナタデココ」とオオムギを利用した新食品素材を開発した。長期保存用に粉末化した野菜や果物なども、適度な繊維質感・新食感を持つ食品に加工できる。余剰農産物や規格外農産物のような未利用資源も3D プリントによる成型技術と組み合わせることで新しい食品づくりに利用でき、世界的に大きな課題となっているフードロス削減にも役立つ。

 食品の乾燥・粉末化は、栄養価を保ったまま腐敗や変質を防いで長期保存を可能にするため古くから利用されている。ただ、多くの場合、粉末化によって元の食品が持つ独特の食感がなくなるため用途が限定されていた。

 そこで農研機構は、農産物由来の粉末に新たな特性を与える研究に取り組み、このほどオオムギに含まれる水溶性多糖とナタデココを利用した新食材「ナタピューレ」の開発に成功した。新食材には食物繊維として日常的に食べられている水不溶性のセルロースと水溶性のβ‐グルカンが含まれており、粉末食品に添加することで適度な繊維質感などの噛み応えが生まれるという。

 また、新食材は粉末食品をペースト状にしたときに粉末をまとめやすくして成形食品を作りやすくする性質を持つ。このため3Dフード プリントによる成形食品づくりに適しているという。さらに、水中で沈殿しやすいデンプンのような粉体でも安定的に水中に分散させる作用を持ち、高度な食品デザインが可能という。

 農研機構は今後、3Dフードプリントなどによる食品加工や、昆虫食、代替肉、培養肉などの次世代型食品製造工程に新食材を利用する技術開発を進め、「おいしく健康に役立つ新食品の提供とフードロス削減につながる新産業の創出を目指す」と話している。