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イネの紋枯病に強く、花も大きくなる遺伝子を発見―大輪のキク栽培など、まずは花き植物の新品種作りから着手:農業・食品産業技術総合研究機構

(2019年3月4日発表)

 (国)農業・食料産業技術総合研究機構は3月4日、病気にかかりにくく、同時に花を大きく育てられる可能性のある遺伝子BSR2(ビーエスアールツー)をイネから発見したと発表した。遺伝子の働きを解明することで、花き植物など多くの植物の開発にも効果を発揮すると期待される。

  紋枯(もんがれ)病はイネの2大病害の1つで、糸状菌の1種リゾクトニア菌の感染で引き起こされる。年間の被害面積は水稲栽培の15%にあたる約22万ヘクタールにも及ぶ。十分な抵抗性を持ったイネは今のところなく、対策は肥料や抗菌剤を工夫する農家の防除法に頼っていた。

  リゾクトニア菌はイネの他にもジャガイモ黒あざ病、トマト苗立枯病、ハクサイ尻腐病、キク立枯病など200以上の植物種で感染することが分かっている。

  そこで農研機構は、理化学研究所環境資源科学研究センター、岡山県農林水産総合センター生物科学研究所と共同で、組換え技術によって遺伝子BSR2をイネから見つけた。

イネでBSR2を強く働かせると、リゾクトニア菌が原因となる紋枯病に対して強くなり、同時に花が大きく育つことが室内実験で確認された。ただイネの稔り具合が非常に悪くなるため、このままでは使えない。

BSR2を強く働かせると実験植物のシロイヌナズナでも病害に強くなり、かつ花が大きくなったことから、この遺伝子はイネだけでなく様々な植物で効果を発揮すると考えられる。

そこで、まずは稔りの悪さが問題とならない花きへの利用を検討しており、手始めに大輪のキクなどの作出を狙っている。