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地域における山菜・薬草の利用供給バランスを解析―多雪県では利用多く、森林の多い県は利用少ない:国立環境研究所

(2018年11月22日発表)

 (国)国立環境研究所は1122日、山菜・薬草の利用供給バランスが気候や社会的な影響によって変化することを明らかにしたと発表した。供給に比べて利用が全国的に少ない中で、森林が多い県ではとりわけ山菜・薬草の利用が少なく、雪の多い県では利用が多いことなどが分かったという。研究成果は持続可能な生態系管理に役立つとしている。

 山菜は和食に欠かせない食材であり、薬草は漢方における重要な資源。これらを持続的、効率的に利用していくためには利用供給バランスの把握が必要不可欠との観点から、環境研では国産天然物の山菜と薬草における利用量と供給量のバランスを測る指標を考案、利用供給バランスの場所による違いを明らかにし、その違いを生んだと考えられる要因を考察した。

 山菜・薬草の利用データは農林水産省が集計した特用林産物生産統計調査結果を利用、供給能力の解析には、モデルをもとに予測した分布面積を使用し、県別の各山菜・薬草の市場流通量と分布面積から各県の予測供給可能量を推定した。また、市場流通額から予測供給可能額を差し引き、その差をもとに利用供給バランスを指標化した。

 コゴミ、ワラビ、コシアブラ、シドケ、乾燥ゼンマイ、タラノメ、ツワブキ、フキ、フキノトウ、ミズ、キハダ、クロモジ、ゲンノショウコの13種を対象に解析した結果、秋田県、山形県、青森県など東北から北陸の日本海側の県が比較的よく山菜・薬草を利用していることが分かった。

 これらの県は降雪量が多く、山菜・薬草の品質が高いこと、また雪国では長らく山菜・薬草を利用する習慣が定着していることが利用の多い要因として考えられるとしている。

 北海道や岩手県、福島県など森林面積が広い地方では、予測供給可能量に比べて山菜・薬草の利用が少なかった。森林が広すぎると資源にアクセスすることが難しくなることや、管理された里山が少なくなってきたことの影響が考えられるとしている。

 高知県の乾燥ゼンマイや青森県のミズなど、特定の地域で非常によく利用されているものもあれば、北海道のキハダなど供給量は多いもののあまり利用されていない山野草もあった。

 山菜の利用は個人消費用の採集が大きな割合を占めているとされているが、今回の調査・研究で得られた知見は広域的なパターンとそのパターンへの影響要因を明らかにしており、生物資源管理に有用としている。