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理論計算から予測する新手法で、新誘電体材料の開発に成功―積層セラミックスコンデンサの開発に新たな設計指針:ファインセラミックスセンター/TDK/京都大学/物質・材料研究機構

(2018年3月27日発表)

 (一財)ファインセラミックスセンターとTDK(株)、京都大学、(国)物質・材料研究機構は327日、スマートフォンやパソコンなどの電子機器に欠かせない積層セラミックスコンデンサの常誘電体材料を、高速計算機を使って理論計算から予測するシステムの開発に成功したと発表した。「マテリアルズインフォマティクス」と呼ばれる新しい材料設計手法で導き出したもので、結晶構造を持つ数種類の材料の合成に成功した。

 コンデンサは電子回路の基本を成すもので、電気を貯める誘電体材料と電極をサンドイッチ状に何層も積み重ねた積層セラミックスコンデンサは小型で周波数特性が良いことで知られている。しかしここで使われているバリウム・チタンの酸化物は70年以上前に発見されたもので、電子メーカーから新規材料の創出が期待されていた。

 これまでは実際に一個一個の材料を作成し、分析して新規材料を見つけ出すなど膨大な時間と手間がかかった。アメリカで始まったマテリアルズインフォマティクスの手法は、実際に材料を合成することなく、扱う物質の原子の配置状態を基に理論的に新物質の電子状態、化学結合、エネルギー状態を見つけられるようになった。

 今回はTDKの求めに応じて、ファインセラミックスセンターと京都大学、物質・材料研究機構がアイディア出しと指導をし、TDKが実際に製造し開発した。マテリアルズインフォマティクスの成果としては我が国でも目新しい。

 この手法を使うと特殊な機能に富んだ材料の開発だけでなく、鉛やカドミウムなどの有害重金属を使わずに環境に適合した電子材料の作成などにも大きく貢献すると期待されている。