アフリカイネ利用によるイネの品種改良に道―イネの「雑種不稔(ふねん)性」に関わる遺伝子の機能改変に成功:国際農林水産業研究センター/京都大学/北海道大学
(2018年2月13日発表)
(国)国際農林水産業研究センター、京都大学、北海道大学は2月13日、共同でイネが持っている雑種の種(たね)を稔(みの)らせない性質「雑種不稔性」に関わる遺伝子を改変して雑種不稔が生じない変異体を得ることに成功したと発表した。
イネには日本人が主食にしているアジアイネの他に、アフリカイネと呼ばれる種(しゅ)が存在し、アジアイネが持っていない高温などの不良環境に耐える有用な遺伝子を持っていることが知られている。
このため、日本のイネの品種改良への利用が望まれているが、今のところそれが出来ないでいる。
アジアイネとアフリカイネの交配では、交配種子は出来るものの、その交配種子を播いて育てても得られた雑種には種子がほとんど稔らない雑種不稔が生じ、子孫を残すことができないからだ。
この雑種不稔性には、「S1」と呼ばれる遺伝子座(遺伝子が占める位置)が深く関わっていることが日本の遺伝学者によって1970年代に明らかにされているが、今回の研究はそのS1遺伝子座に着目して突然変異を起こさせ、S1遺伝子座の機能を人為的に改変することで雑種不稔が生じない変異体を作ることに成功した。
イネの雑種不稔は、他の植物が交わらないようにする障壁、すなわち「種(しゅ)の壁」と考えられているが、研究グループは「種の壁を部分的に取り除くことに成功したといえる」といっている。
実験では、交配種子を多数用意し、ヘリウムより重い重イオンを加速器で加速して照射する重イオンビーム照射法によって突然変異の誘発を行った。その得られた2,400粒以上の照射粒子をテスト圃場(ほじょう)に種まきして育てた結果、種子が稔るようになる突然変異体が得られることが分った。
アジアイネとアフリカイネの間の雑種不稔性に関わる遺伝子は、他にも存在することが知られている。研究グループは、そうした他の遺伝子についても今回の方法を用いて突然変異体を得ることによりアフリカイネが持つ有用遺伝子をアジアイネの品種改良に利用することが容易になるものと見ている。