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アスパラガスの収量が飛躍的に上がる―病害に強い抵抗性示す新品種を開発:農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2023年10月26日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構と香川県、九州大学の共同研究グループは10月26日、成育中のアスパラガスを枯らせてしまう「茎枯病(くきがれびょう)」に対し高い抵抗性を示すアスパラガスの新品種を開発したと発表した。露地栽培のアスパラガス収量を今より飛躍的に上げることが期待できるという。このアスパラガスの新品種は「あすたまJ」と呼び、さらに現地実証試験を進めて2028年頃にはアスパラガス生産者に種苗を提供できるようにしたいといっている。

 日本で初めてアスパラガスが栽培されたのは北海道で、それから100年経つ。今も生産量トップは北海道で、佐賀県、熊本県が続き、北から南まで日本各地で作られるようになり年産量は2021年で25,200tとなっている。

 だが、ハウスを使わず畑に植え付ける露地栽培では、「アスパラガス茎枯病」と呼ばれる深刻な病害に悩まされている。これが発生すると茎に斑点が生じ、やがて株が死んでしまう。アスパラガスの約8割は露地で栽培されているだけにこの茎枯病は深刻で、我が国だけに留まらずアジアモンスーン地域の中国、東南アジア諸国、韓国でも問題になっている。

 しかし、アスパラガス茎枯病に高い抵抗性を示す品種は、まだなく、今回開発した新品種は「アスパラガス生産を革新することが期待できる」と農研機構は自信を見せている。

 アスパラガスは、一度植えると一般に10年以上栽培が行われるため、茎枯病が発生すると長年にわたってその被害を受けることになる。今回の新品種は、それを防ごうと東北大学がアスパラガスと日本固有種のハマタマボウキと呼ばれる植物を交配(交雑)し、それが茎枯病に強い抵抗性を持つことを九州大学が見つけて作り上げた。

 これまでに殺菌剤無散布状態で行った露地栽培では、従来品種が衰弱してしまう条件下でも「あすたまJ」は、複数年にわたって旺盛に生育し、茎枯病に対し高い抵抗性を持っていることを確認した。

 また、「あすたまJ」は、露地栽培において従来品種が衰弱して収量がゼロ近くにまでなる条件下でも高い収量が得られることを実証している。

茎枯病菌を摂取した苗の発病状況(接種28日後) (提供:農研機構)