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高齢運転者が起こすリスクは若年層よりも低い―事故リスクと健康リスクに配慮した高齢運転者対策の見直しを:筑波大学

(2023年10月13日発表)

 筑波大学医学医療系の市川 政雄 教授の研究グループは10月13日、交通事故データを基に事故を起こした運転者の年齢層ごとの事故リスクを分析した結果を発表した。年齢とともに事故リスクは高まるものの、若年運転者と比べると高齢運転者の事故リスクは低かった。運転をやめることで損なわれる高齢者の健康リスクを考えると、過度に免許返納を求めることは控えるべきかもしれないとコメントしている。

 研究は高齢者の事故リスクを検証するのが目的。全国交通事故データを2016年から5年分入手し、免許保有者当たりの事故件数(事故リスク)、事故件数当たりの死傷者数(死傷リスク)、死亡事故の各当事者が死者数に占める割合を、事故を起こした運転者(過失が重い方)の性別、年齢ごとに比較分析した。

 その結果、事故リスクは40-50歳代の中年期以降、年齢と共に高くなったが、10-20歳代の若年運転者と比べて高齢運転者のリスクは低かった。特に衝突相手が車の場合に顕著だった。

 相手が自転車や歩行者の事故は高齢運転者が相対的に高く、死傷リスクも高い傾向にあった。運転者自身の死傷リスクも高かった。ところが衝突相手全体の死傷リスクは、年齢層間で大きな違いはなかった。

 高齢運転者の事故対策は、道路交通法の相次ぐ改正で厳しくなっている。1998年に75歳以降の運転免許の自主返納制度と高齢者講習が導入され、これが2022年からは70歳以上に繰り上げられた。  

 その後、事故によっては認知機能検査の必要や医師の診断の義務付け、免許取り消し措置など高齢運転者対策が強化され、同時に免許返納の呼びかけが全国的に広まった。

 しかし、運転を止めることで生活に支障をきたし、健康を損なうデメリットの可能性もあることは国内の複数の研究で実証されている。運転を止めれば事故がなくなるのは当然だが、交通手段が限られる地域は多く、運転をやめることで生活に支障をきたし、健康を損なうリスクについては考慮されていない。

 研究グループは、高齢運転者に過度に運転免許返納を求めるのは控えるべきかもしれないとし、高齢者が活動的な生活ができるような運転継続の支援と、やめた後のモビリティ支援をセットにした対策が必要と提言している。