脳科学でわかった紙のマンガの読書効果 -脳の活動が省エネ化
(2026年8月01日)
マンガを紙の本と電子書籍で読んだ後の脳活動から、紙の本で読んだほうが脳活動が省エネ化されることを、東京大学大学院総合文化研究科の酒井 邦嘉(さかい くによし)教授の研究チーム(梅島 奎立(うめじま けいた)助教、砂田 裕貴 修士課程大学院生)が、株式会社コアミックスとの共同研究によって明らかにしました。
では、どのようにして、紙の本での読書の有効性が明らかになったのでしょうか。
ここでは「省エネ化」とは、脳の余分な活動を抑えることを意味します。
被験者に紙の本と電子書籍で同じマンガを読んでもらい、そのときの脳の活動をfMRI(機能的磁気共鳴画像法)によって調べました。実験の参加者は、大学生・大学院生の25名で、約半数が紙・電子のどちらか、あるいは両方で日常的に漫画を読む習慣がありました。用意されたマンガ作品は、前半と後半に分かれていて、それぞれ二人の主人公のうち、一方のみの視点で描いてあります。前半の部分をfMRIで測定する前に、紙の本かタブレットかで読んでもらい、後半はすべてfMRI内でデジタル画面付きのゴーグルで読んでもらうようにして、脳の活動を調べました。タブレットではなくゴーグルを使ったのは、タブレットはfMRIの強い磁気環境では使えないからです。fMRIとは、脳内の神経活動に伴う血流変化を、局所磁場の変化から測定し画像化する手法のことで、脳に入力された情報がどの部位で処理されているかがわかります。
被験者には、マンガの内容に関する問題を出して答えてもらいました。問題は各話あたり6問ずつ用意して、前半のみを読んで答えられる問題と、前半と後半の両方を読まないと答えられない問題が各話ごとでほぼ半々となるように作成しました。
この実験の結果、紙の本を読んで内容を理解しておいた場合は、後半の読書時に脳の言語野などの活動が節約されたことが分かったといいます。つまり、紙の本の読書が脳の思考過程を促進しうることがわかりました。
現在、会社や学校など社会のあらゆる方面で、文書の電子化が進み、学校ではデジタル教科書の導入が検討されている状況の中で、紙の本の有効性に再度、目を向けてみる必要性があると、研究グループは考えています。

(画像提供:東京大学 大学院総合文化研究科 酒井研究室)
【参考】
■東京大学プレスリリース
紙のマンガの読書効果を脳科学で実証 ─デジタル書籍より左脳と右脳の活動が省エネ化

サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。

