Carbon Poolコンクリートの開発と大阪・関西万博への協賛・展示
(株式会社安藤・間 技術研究所 脱炭素技術開発部 坂本 守)
(2025年9月15日)

建設会社である安藤ハザマの技術研究所はTX研究学園駅南側にあり、7万平方メートルを超える広大な敷地に建つ本館、9つの実験棟、屋外実験場などによって構成されています。この研究所のコンセプトは「人間と自然環境を結ぶ技術の創出」。この実現に向けて、現在の技術的課題への対応はもちろん、将来的な研究ニーズにも対応できるよう、「Change & Challenge!」をスローガンに所員全員が固定観念に縛られることなく、未来の建設現場、建設システム構築を目指して挑戦し続けています。
今回は現在行っている技術研究開発の中で、「Carbon Pool(カーボンプール)コンクリート」(以下、CPコンクリート)をご紹介します。近年は温暖化防止や脱炭素が叫ばれていますが、建設業界でも工事におけるCO2排出量を削減するため、カーボンニュートラルな材料や工法の開発に取り組んでいます。このCPコンクリートは、安藤ハザマを含めた会社、団体らでコンソーシアムを構成して提案し、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)によるグリーンイノベーション基金事業に『Carbon Poolコンクリートの開発と舗装および構造物への実装』として採択されたものです1) 。
CPコンクリートはコンクリート解体ガラや生コン工場等から排出されてきた産業廃棄物等に、処理時間や工事工程の中で効率よく短時間にCO2を固定化してコンクリート用材料として利用しコンクリートを製造します。併せて、コンクリートの脱型後の初期養生時にも高濃度の炭酸塩溶液を使用してコンクリート中のセメント水和物等を積極的に炭酸化し、コンクリートに固定されるCO2固定量を増加させることを目指したコンクリートです2)。
このように、その地域で発生したコンクリート系廃棄物を炭酸化し、有益な炭酸化材料として再利用することで、地域内資源循環を構築することが重要なコンセプトの一つなのです。

このCPコンクリートを広く皆さんに知っていただくため、現在開催中の大阪・関西万博にCPコンクリートコンソーシアムとして未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」パビリオンにおいて、試験施工を実施するとともに、「PARALLEL TOUR」というアトラクションのブース展示も行っています3)。
ここでは、CPコンクリートでできたパラレルシップに乗って現在と未来を行き来できるパラレルツアーに出発し、「脱炭素に失敗した未来」と「脱炭素に成功した未来」の差を感じてもらい、CO2を吸収・固定するCPコンクリートが持続可能な未来社会へのキーになり、自分たち自身の選択が未来を左右することをアピールしています。

試験施工では、「未来の都市」パビリオンの外構部の舗装や内部の通路の床のブロック板やベンチなどをCPコンクリートで製造・設置していますので、まだ万博に行かれていない方は是非一度足を運んで、CPコンクリートを実感していただければと思います。
【参考】
1)安藤ハザマリリース 2022.01.28
NEDOのグリーンイノベーション基金公募事業に提案採択
~CO₂を高度利用したCARBON POOLコンクリートの開発と舗装および構造物への実装~

坂本 守(さかもと まもる)
株式会社安藤・間 技術研究所 脱炭素技術開発部長
1989年4月株式会社間組(現: 株式会社安藤・間)入社。技術研究所、土木設計部、ダム等の建設現場、経営企画部などで、土木コンクリート材料の技術開発や環境系の業務を経て、2022年4月からCPコンクリートプロジェクトの開発責任者として現職。