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先天性筋ジストロフィー症に関わる糖鎖の合成機構解明―原因遺伝子が作るたんぱく質の集合がカギ:東京都健康長寿医療センター/高エネルギー加速器研究機構

(2020年1月17日発表)

 東京都健康長寿医療センターと高エネルギー加速器研究機構の共同研究グループは1月17日、先天性筋ジストロフィー症の原因遺伝子FKRPによる糖鎖合成機構を解明したと発表した。病態の解明や治療法の開発への貢献が期待されるという。

 筋ジストロフィーは筋肉が徐々に壊死し筋力が衰えていく遺伝性筋疾患の総称で、いろいろなタイプがある。先天性筋ジストロフィーはそのうちの一つで、福山型をはじめ、いくつかの非福山型を含む。

 研究グループは先に、福山型とその類縁疾患の原因遺伝子産物であるfukutin、FKRPと名付けられたたんぱく質の機能を明らかにし、これらが糖鎖を作る糖転移酵素の仲間であること、その働きによって「リビトールリン酸」が2個つながったユニークな構造の糖鎖が形成されることを見出した。

 今回は先天性筋ジストロフィー症の病態解明や治療法の開発などを目指し、この糖鎖が合成される仕組みを調査し、糖鎖合成機構を解明した。

 まず、X線結晶構造解析によりFKRPの立体構造を解明、FKRPがリビトールリン酸をつなげて糖鎖を伸ばす仕組みを明らかにした。

 FKRPは1分子単独で存在するのではなく、FKRPが4つ集合した「4量体」という状態で存在し、うち2つのFKRPが協調して糖鎖を挟み込んで捕まえることが分かった。糖鎖を捕まえるこの方式は初めての発見で、ユニークなリビトールリン酸構造を形成する基盤であることが明らかになった。

 筋ジストロフィー症患者から見つかったいくつかの変異FKRPは、4量体を作ることができなかった。このことから、FKRPが複数集まって存在することはFKRPが糖鎖を捕まえるために必須であることが分かった。

 今回の研究により、FKRPが4量体を作ることが機能的に重要であることが示されたことから、4量体を作れなくなった患者に対しては、4量体を作らせる化合物・薬物を見出せば、筋ジストロフィー症の治療につながる可能性が示されたとしている。