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発光効率と色純度に優れる有機EL用の青色蛍光体を開発―酸素原子を導入した有機ホウ素化合物で成果:茨城大学ほか

(2019年11月25日発表)

 茨城大学、九州大学、京都大学の共同研究グループは11月25日、発光効率と色純度ともに優れる有機EL用の青色蛍光体を開発したと発表した。青色有機EL材料の性能向上につながる成果で、有機ELの実用化開発の加速が期待されるという。

 有機ELは、軽くフレキシブルで輝度やエネルギー効率などに優れており、次世代のフラットパネルディスプレイなどの実現を目指して各国が精力的に研究を進めている。主要な課題の一つは、優れた性能の青色有機EL材料の開発。

 性能を評価する指標の一つとして、発光体に注入された電荷をどれだけ光子に変換できるかを示すIQE(内部量子効率)と呼ばれる効率があるが、2012年に九大の研究チームが熱活性化遅延蛍光(TADF)という現象を用いることにより蛍光発光体でIQEが100%に達する有機ELが得られることを見出し、以来TADFを活用した有機ELで発光効率と色純度が高く、かつ寿命が長い青色を発する有機ELの開発が焦点になっている。

 研究グループは、今回の研究に先立ち、ラダー構造と呼ばれる梯子(はしご)状の頑丈な分子骨格にホウ素と窒素あるいは硫黄を混ぜて導入することで幅広い波長において優れた蛍光特性を持つ発光体が得られること、また、有機ホウ素化合物を電子アクセプターとして用いると発光効率・色純度の高い青色TADF発光体が得られることを見出した。

 そこで今回、ラダー構造を持つ有機ホウ素化合物と芳香族アミンとを結合した2種類の分子を作製し、TADF発光体としての特性を調べた。

 その結果、硫黄を含む分子は低輝度領域では非常に高い発光効率を示したが、輝度を上げていくと効率低下が顕著になった。それに対し、硫黄の代わりに酸素を含む分子は低輝度領域から高輝度領域まで発光効率はほとんど低下せずに高い状態を保つことが認められた。発光色も純粋な青色を示し、その波長幅も狭く、青色EL材料として良好な特性を示した。

 これらの成果は、TADF型青色発光体の開発における重要な設計指針となるもので、今後は素子寿命の向上などを図り、実用化につなげていきたいとしている。