これまでなかった青色系のキクを作る技術を開発
:花き研究所/サントリーホールディングス(株)

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構の花き研究所は9月14日、サントリーホールディングス(株)と共同で、遺伝子組み換え技術を用いキクに青色色素を蓄積させて青色系のキクの新品種を作る技術を開発したと発表した。
 キクは、日本での作付面積、出荷量や出荷額が切り花類の中で最も多く、世界市場でもバラやカーネーションと並んで主要な花の一つになっている。キクには、白・黄・赤など多彩な花色があるが、紫や青といった青色系の花色はない。キクに青色色素を作るのに必要な青色遺伝子がないためで、新品種作りを進める上で新しい技術の開発が望まれていた。
 植物の花には、色素「アントシアニン」が含まれている。アントシアニンは、糖が結びついた配糖体の形で細胞の中に含まれているが、糖を取り除いた部分を「アントシアニジン」と呼ぶ。アントシアニジンには、化学構造がわずかに違う3つの型(ぺラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジン)がある。キクの赤色系の花のもととなっているのはシアニジン型アントシアニン(赤色色素)。青色系を発色するのはデルフィニジン型アントシアニン(青色色素)で、ぺラルゴニジン型アントシアニンは橙赤色(オレンジ赤色)を呈する。
 青色色素を合成するカギとなるのは、「フラボノイド3′,5’位水酸化酵素(F3’5’H)」と呼ばれる酵素の働きだが、キクにはこのF3’5’Hの遺伝子(青色遺伝子)が存在しない。これまでも様々な植物から青色遺伝子を分離し、遺伝子組み換え技術を用いてキクに導入すれば、青色系のキクは作れると考えられていたが、実現していなかった。
 研究グループは、様々な植物から青色遺伝子を分離すると共に、他の植物から取り出した青色遺伝子をキクに導入して花弁で機能させる実験を行い、青色色素であるデルフィニジン型アントシアニンを花弁に蓄積する技術を開発した。
 その結果、カンパニュラ(キキョウ科のホタルブクロ属の植物)の青色遺伝子を用いた場合に、キクに含まれる赤色色素の約75%が青色色素になり、花色が元の赤紫色から紫色に変化したキクが得られた。新しく開発した技術により、これまでにない花色を持つキクの新品種の開発が可能になった。
 この研究成果は、9月15~18日に名古屋大学で開催された国際学会で発表された。

詳しくはこちら