新開発の光周波数コム装置が「長さの国家標準」に
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は7月16日、同研究所で開発した光周波数コム装置が、日本の「長さ」の計測器の頂点に位置する国家標準(特定標準器)に指定されたと発表した。
 日本の長さの国家標準(特定標準器)は、これまで同研究所にある「ヨウ素安定化ヘリウムイオンレーザー」であったが、今回、最新技術である光周波数コムを採用した「協定世界時に同期した光周波数コム装置」が、長さの国家標準(特定標準器)として7月16日経済産業大臣から指定された。
 国家標準(特定標準器)とは、国が維持し、国内の計測器(計量器)に対して目盛の標準を供給するもの。計量法により、特定標準器として位置付けられている。
 「光周波数コム」とは、モード周期レーザーと呼ばれる超短光パルスレーザーから出力される、広帯域で櫛状のスペクトルを持つ光のことをいう。「協定世界時」は、各国の標準時の基準となると共に、時間周波数標準分野における基幹比較基準値として用いられる。
 同研究所では、光周波数コムを用いると、広い範囲の波長に対して、波長標準を設定できること、不確かさを大幅に低減できることが予想されたため、精力的に開発を行ってきた。
 新しい装置は、従来のヨウ素安定化ヘリウムイオンレーザーと比べ、次のような3つの優位性を持っている。[1]精度向上(不確かさ低減)=長さの国家標準として発生する「波長(真空中)」が300倍高精度となった。[2]複数の波長に対応=これまでは633nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の波長のレーザーの校正しか行えなかったが、光通信帯の1.5μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)帯および短波長帯の532nmのレーザーの校正も可能となった。[3]堅牢性=装置の寿命や動作の信頼性などについても、従来のレーザーをしのいでいる部分があり、これまでよりも、さらに確実な標準供給が可能となった。
 新装置による校正サービスが開始されることにより、今後新しい高速光通信技術の開発につながるなど産業界への波及効果も期待されている。

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長さの国家標準になった光周波数コム装置(提供:産業技術総合研究所)