陸域観測衛星「だいち」のデータから岩手・宮城内陸地震の地殻変動範囲を解明:国土地理院

 国土交通省国土地理院は6月25日、(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち」が観測した合成開口レーダー(PALSAR)のデータの解析から、岩手・宮城内陸地震によって地殻変動を起こした範囲が明らかになったと発表した。
 国土地理院は、この地震の地殻変動について、すでに電子基準点の「栗駒2」(宮城・栗原市)で約2.1mの隆起と、約1.5mの水平変動を確認し公表しているが、今回の地殻変動を面的に把握することが可能な人工衛星の観測データの干渉解析から次のことが明らかになったとしている。

  1. 面的変動:地殻変動を表す縞は、東西に集中している。解析から読み取れる最大の変動量は、栗駒山周辺(栗原市)で少なくとも1mを超える。
  2. 変動が集中した範囲:電子基準点「栗駒2」が設置されている地域を含め、岩手県奥州市胆沢区付近から宮城県栗原市西北部の花山周辺にかけて北北東―南南西を軸に、幅約10km、長さ約30kmの範囲に見られる。この範囲では、急激な地形の変動があったことを示している。

 陸域観測技術衛星「だいち」に搭載されているPALSARは、樹木に覆われている場所でも地表が観測できる電波(マイクロ波)を使っている。「だいち」のPALSARは、地表から約700kmの上空を飛行する衛星の進行方向に対して、右斜め下(衛星視線方向)を観測しており、対象地域の西側から観測する「北行軌道」と、東側から観測する「南行軌道」で地殻変動を捉えている。
 国土地理院は、今後観測されるデータを用いて、より詳細な分析を行う予定にしている。

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合成開口レーダーの観測データから得られた地殻変動分布図(提供:国土地理院)