生物の活性酸素を除去する新たな仕組みを発見
:産業技術総合研究所/大阪大学

 (独)産業技術総合研究所は4月21日、大阪大学と共同で、原始的な微生物において活性酸素を除去するタンパク質を解析し、活性酸素除去の新しい仕組みを発見したと発表した。
 強力な酸化作用をもつ活性酸素による細胞へのダメージは、酸化ストレスと呼ばれ、がんなどの疾患や老化にかかわるとされている。
 研究チームは、温度90ºC以上で生息する最も原始的生命に近いといわれる古細菌から、活性酸素の一種である過酸化水素を除去する抗酸化タンパク質(ペルオキシレドキシン)をみつけ、化学構造を明らかにした。また、このタンパク質の除去反応(過酸化水素との反応)に伴う化学構造の変化を追跡した。
 その結果、有機合成化学などで反応促進剤として使われる「超原子価化合物」が重要な役割を果たしていることを確認した。超原子価化合物は、反応化学などの分野で様々な用途に使われる有用な化合物だが、これまで天然物から見つかったことはなく、生物による利用は初めての発見となった。
 この発見は、従来知られていなかった抗酸化タンパク質による酸化反応(活性酸素除去)の新たなメカニズムを明らかにしたもので、酸化ストレスに関する医療技術への応用が期待される。また、有機合成化学の分野においても、「原始生命に学ぶ」新たな化学合成の手法開発のヒントになるとみられている。

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