物質の機能をつかさどる電子の可視化に成功
:理化学研究所/筑波大学/島根大学

 (独)理化学研究所は2月27日、筑波大学、島根大学と共同で、物質の機能・性質をつかさどる電子の状態を選択的に可視化することに成功したと発表した。
 物質の機能と構造の関係を明らかにするために、従来放射光X線を用いた方法で解析していたが、従来の方法では物質の性質(物性)に直接関与しない原子の中心付近にある電子も含め全ての電子を可視化することになる。
 研究グループでは、物性に直接関与する原子の周りにある電子の状態を、選択的・定量的に可視化するために、X線回折データから静電ポテンシャル(電位)を求める画期的な解析手法「静電ポテンシャルイメージング法」を開発した。
 この手法を用いて、巨大磁気抵抗効果(GMR効果:外部磁場の変動に応じて電気抵抗が大きく変化する現象)を示すマンガンを含む酸化物が、マイナス255ºCという低温環境に曝されると電流が1万倍以上も流れにくくなるという現象を観察した。
 マンガン酸化物は、マイナス115ºCで性質が金属から絶縁体に転移し、絶縁体に磁場をかけると電気抵抗率が1万分の1に減少するというGMR効果を示す。これまで物性が金属から絶縁体に変化することは知られていたが、実験的には明らかにされていなかった。
 今回初めて、マンガンの周りの電子の運動が凍結されることにより、金属状態のように電子が動き回れなくなるために絶縁体になるという電気抵抗率の変化の原因を解明した。
 静電ポテンシャルイメージング法は今後、基礎科学だけでなく新しい機能を持つ材料の開発を進める産業科学まで、幅広い分野への応用が期待されている。

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