(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(株)は2月23日、超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)」をH-IIAロケット14号機で同機構の種子島宇宙センター(鹿児島)から打ち上げたと発表した。打ち上げは、同日午後5時55分。衛星は、傾斜角28.5度、高度約36,000kmの軌道に乗った。 「きずな」は、今後何度も軌道変更して、最終的に東経143度の赤道上空に静止する衛星となり、国内実験だけでなく、アジア諸国参加の國際共同実験も計画されている。 「きずな」は、衛星通信としては世界最速の毎秒1.2Gb(ギガビット=ギガは10億)の超高速通信ネットワークの検証とその利用実験に向け、JAXAと情報通信研究機構(NICT)が共同開発した重さ約2.7t(静止軌道上での初期重量)の静止型通信衛星。衛星本体の大きさは2m×3m×8mで、国内・近隣国向け、東南アジア向けなど3つのアンテナと関連通信機器などを備えている。開発費は367億円、設計寿命は5年。 国内・近隣国向けアンテナは9つのビームで日本全土とソウル・北京・上海を、東南アジア向けアンテナは香港・マニラ(フィリピン)・バンコク(タイ)・クアラルンプール(マレーシア)・シンガポール・ジャカルタ(インドネシア)・バンガロア(インド)を、それぞれカバーする。 3つ目の電子走査ビームアンテナは、アジア・太平洋地域を対象に、通信エリアを2ミリ秒で切り替え、需要のある任意の地域に対しての迅速な通信を可能にする。降雨時の安定通信維持のため、限られた電力の中で、降雨地域に適切な電力配分を可能にする技術も使われている。 高性能な増幅器と交換機を備えた「きずな」は、大掛かりな地上設備が不要で、直径5mの大型アンテナなら最大毎秒1.2Gbの送受信が、直径45cmの小型アンテナでも現在のブロードバンド並みの毎秒155Mb(メガビット=メガは100万)の受信または6Mbの送信が出来る。 「きずな」を使った実験としては、大規模災害で地上通信網が断絶した時のバックアップ、高品位画像利用の遠隔医療、タイやマレーシアと日本を結んでの双方向映像による遠隔教育など、公募も含めて90余件が計画されている。 詳しくはこちら |  |
「きずな」を搭載して上昇するH-IIAロケット14号機(提供:宇宙航空研究開発機構) |
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