「J-PARC」に超電導ソレノイド電磁石を搬入、最強のミュオンビーム生成へ
:高エネルギー加速器研究機構

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)は2月14日、茨城県東海村に建設中の「大強度陽子加速器施設(J-PARC=ジェイ・パーク)」の心臓部分の一つ「超電導ソレノイド電磁石」の据え付けが完了したと発表した。
 J-PARCは、世界最高クラスの大強度陽子ビームを生成する加速器と、そのビームを利用する実験施設で構成される最先端科学の研究施設で、KEKと(独)日本原子力研究開発機構が共同プロジェクトを組んで建設を進めており、今年中に実験が開始される予定になっている。
 J-PARCの実験施設の一つである物質・生命科学実験施設(MLF)では、世界最高強度のミュオン(電子の約209倍の重さを持つ素粒子)や中性子ビームなどを発生させ、これらを用いて物質科学や生命科学研究を推進することを目指している。今回据え付けられた超電導ソレノイド電磁石は、これまでつくば市(茨城)のKEKにあったものを移設したもので、MLFのミュオンビームを発生させる心臓部分に用いられる。
 ソレノイド電磁石は、鉄芯に巻きつけたコイル(導線)に電流を流して磁場を作る方式の磁石。KEKのミュオン科学研究施設(つくば市)にあった超電導ソレノイド電磁石は、KEKが1980年に世界で初めてのパルス状ミュオンを取り出して以来2006年3月末の運転停止まで、27年間にわたり稼動してきた。その実績を買われて、J-PARCで再び使用されることになった。
 超電導ソレノイド電磁石を使用する際には、超電導線を極低温に冷却する必要がある。この冷却には、やはりミュオン科学研究施設で使われた冷却装置を改修して使用する。超電導ソレノイド電磁石と冷却装置は、1月16日に組み合わされ、J-PARKのミュオンビームラインの所定位置に据え付けられた。

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J-PARCでの超電導ソレノイド電磁石と冷却装置の組み合わせ作業(提供:高エネルギー加速器研究機構)