(独)物質・材料研究機構は11月5日、早稲田大学理工学術院と共同で、30テスラ(テスラは磁束密度の単位。1テスラは1万ガウス)級の超強磁場を利用することにより、直径2~50nm(ナノメートル=1nmは10億分の1m)のメソチャネルと呼ばれる細孔が基板に規則正しく垂直に並んだシリカ(二酸化ケイ素)薄膜の合成に成功したと発表した。
メソポーラス物質(均一で規則的な細孔を持つ物質)の薄膜は、高い透明性があることから様々な分野で分子デバイスとしての利用が期待されている。これまで界面活性剤とシリカなどを混ぜて液晶(リオトロピック液晶)状態になった材料を、基板上にコーティングすることにより様々な透明薄膜が得られた。こうした透明薄膜を、超高密度記録媒体や高感度センサーなどへ応用するため、特にメソチャネルが基板に対して垂直な向きに並ぶ「垂直配向性メソポーラス薄膜」の実現が望まれていた。
今回の研究では、界面活性剤分子が反磁性物質の一つであることから、リオトロピック液晶も強磁場下では磁気的反応を示すものと考え、超強磁場を利用して垂直配向性メソポーラス薄膜の合成を目指した。同機構のハイブリッドマグネットを用いて、リオトロピック液晶が形成される段階で、30テラス級の超強磁場を加えたところ、汎用の超伝導マグネット(12テラス)を用いた場合にはまったく向きを変えなかった小さな分子でも、基板に垂直な向きに変えることに世界で初めて成功した。
この研究成果は、国際学術誌「Chemistry-An Asian Journal」の12月号に掲載される予定。
No.2007-44
2007年11月5日~2007年11月11日