有機ナノチューブ使い「ナノピペット」を作製
:産業技術総合研究所/名古屋大学/東北大学

 (独)産業技術総合研究所と名古屋大学、東北大学の研究グループは8月1日、内径がわずか50nm(ナノメートル=1nmは10億分の1m)の有機ナノチューブ(ONT)を用いた「ナノピペット」の作製に成功したと発表した。
 ナノテク時代に分子を分析、あるいは取り扱うためには、機器の微少化が不可欠だが、作製が難しい。溶液を吸引・吐出するピペットについても形状制御性、操作性、超極微量の溶液噴出性に優れたナノピペットを、特別な装置を使わず容易に作製する手法の開発が望まれている。
 同研究グループは、内径100nm以下の中空シリンダー状有機ナノチューブを組み込み固定する技術を開発してガラス製のナノピペットを実現した。
 このONTナノピペットは、ナノ流路となる一本の有機ナノチューブ(内径50nm、外径400nm、長さ約10,000nm )をマイクロガラスピペット(先端の内径1,800nm)にマイクロマニピュレーション技術を駆使して取り付け、紫外線硬化性樹脂で隙間を埋めたもの。ごく一般的な微動ステージを用いたマイクロマニピュレーターと光学顕微鏡だけで作ることができ、特別な装置を全く必要としない。
 ONTナノピペットからの噴出量は、電圧で制御でき、市販のマイクロガラスピペットの100分の1から1万分の1の量に相当する超極微量の溶液を噴出できるという。 
 今後は、このナノピペットをマイクロマニピュレーションシステムに組み込んで、一個の細胞内に有用物質の溶液を注入できるようにするなど、生物学分野に応用していくことを計画している。

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作製したナノピペットの光学顕微鏡写真(提供:産業技術総合研究所)