ナノ炭素材料に活性酸素除去能があることを発見
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は2月9日、ナノ炭素材料のフラーレン(炭素原子でできた球状分子)が、活性酸素の一種である一重項酸素を除去する能力を持つことを初めて発見したと発表した。
 活性酸素は、酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称で、その一種である一重項酸素は、活性が高いために各種物質を酸化しやすいことから材料の光劣化の原因の一つになっている。また、生体にとっては、遺伝子(DNA=デオキシリボ核酸)の損傷や皮膚の老化の一因になっている。
 産総研の研究グループは、様々な応用が期待されているナノ炭素材料について、初めて一重項酸素の除去材料としての観点から各種のフラーレンの一重項酸素除去能を系統的に精密に測定し、検証を行った。その結果、球状(かご型)のサイズが大きい(かごを形成する炭素原子の数が多い)高次フラーレンの一つ「C82」と、かごの内部に金属原子を閉じ込めた金属内包フラーレンの一重項酸素除去能が非常に高く、自然界で最も除去能が高いβ(ベータ)カロテンと同じレベルの除去能を持つことが分かった。
 また、今回の研究で、先端がホーン(ツノ)状の構造を持つカーボンナノホーンにも一重項酸素の除去能があることが初めて明らかになった。
 産総研では今後、紫外光による材料の劣化の原因の一つである光酸化の防止を目的として抗光酸化剤への応用を目指すことにしている。将来は、バイオ、医療分野への展開も視野に入れる方針である。

82個の炭素原子でできたC82の構造(提供:産業技術総合研究所)