高純度D型ホモセリンの簡便な新製法を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は1月30日、新たに発見した微生物を用いて、抗生物質や抗がん剤などの製薬原料としての用途が期待される「D型ホモセリン」の簡便な製造法を開発したと発表した。
 産総研の酵素開発研究グループは、つくば市(茨城)の土壌からホモセリンの中でL型ホモセリンだけを分解する微生物を発見した。ホモセリンには、D型とL型があり、両者は鏡像関係にあることから鏡像異性体と呼ばれている。鏡像関係とは、たとえば右手と左手のように、向かい合わせることはできても完全に重ね合わせることができないような関係をいう。
 薬剤としての効果は、鏡像異性体の一方にのみあって、他方は効果がないか、場合によっては有害であることが多い。製薬において鏡像異性体の分離は極めて重要な問題で、製薬原料として利用する場合には高い純度が要求される。
研究グループは、微生物機能の特徴の一つである立体選択性を利用して、原料であるDL型ホモセリン(D型ホモセリンとL型ホモセリンの1対1の混合物)の中のL型ホモセリンだけを効率的に取り除き、高純度のD型ホモセリンを製造することに成功した。
 DL型ホモセリンは、安い値段(試薬として1g約600円)で得られるが、高純度のD型ホモセリンは大量に生産する方法が確立されていないため極めて高い(試薬として1g約6万円)。今回の製造法により、高純度D型ホモセリンが安価に供給されるようになれば、医薬品などへの利用が進むものと期待される。