首都大学東京大学院理工学研究科の真庭豊(まにわ・ゆたか)助教授らと(独)産業技術総合研究所の共同研究チームは1月22日、単層カーボンナノチューブの内部で、水分子とガス分子が入れ替わる「交換転移」と呼ばれる現象を初めて発見したと発表した。この現象を用いると、水を吸着した単層カーボンナノチューブをガスセンサーやナノバルブとして利用出来るという。
この研究成果は、英国の科学誌「ネイチャー・マテリアルズ」のオンライン版(電子版)に1月21日(英国時間)掲載された。
疎水性の単層カーボンナノチューブが、その微細な筒状の内部に水を吸着することは知られているが、今回の研究では各種ガスとの共存下で水の振る舞いを明らかにし、メタンや二酸化炭素など7種類のガスとの間で交換転移が起きることを突き止めた。
交換転移が起きる条件は、ガスの種類によって変わり、1気圧のメタンはマイナス30℃以下で単層カーボンナノチューブの内部から水分子を追い出し、そのあとに入り込んだ。一方、ヘリウム、水素、ネオンでは、マイナス170℃以下まで水分子は安定して内部に留まった。
単層カーボンナノチューブのフィルムを使った実験では、この交換転移に伴って電気抵抗が急激に変化し、ガスを選別するセンサーに応用可能であることが分かった。今後、共同開発メーカーを募り、ガスセンサーや分子選別ナノバルブの実用化を目指す。
No.2007-4
2007年1月22日~2007年1月28日