(独)国際農林水産業研究センターは1月11日、遺伝子組み換え技術を使い乾燥にも高温にも強い環境ストレスに耐性を持つ植物の開発に成功したと発表した。 同センターは、東京大学農学生命科学研究科、理化学研究所との共同研究で、乾燥や急激な温度変化などの環境ストレスに対して植物が耐性を持つようになるメカニズムを分子レベルで解析した。 この研究で、乾燥と高温のストレスに対する耐性にかかわる遺伝子群の働きを調節する因子(DREB2A:転写反応を制御するタンパク質)を、モデル植物のシロイヌナズナを用いて見つけた。しかし、DREB2Aは、植物の中で合成されたままの状態では機能しないことが分かったため、研究グループはDREB2Aの塩基配列を部分的に改変して働きを活性化した。活性化したDREB2Aを植物の中に導入すると、他の複数の遺伝子が一度に強く働き、乾燥と高温のストレスに対して高いレベルの耐性を示した。 シロイヌナズナを使った乾燥ストレス耐性の実験では、2週間水をやらないと野生型は全て枯れてしまったが、活性型DREB2Aを導入した多くは生き残った。高温ストレス耐性の実験では、発芽後1週間目に45℃の高温にすると野生型の生存率は13%だったが、活性型DREB2A型を導入したものの生存率は80%以上であった。 乾燥と高温の両方のストレスに対する耐性を高める因子の開発は世界でも初めてのことで、研究成果は米国アカデミー紀要(PANS)2006年12月号に掲載された。
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2週間水を与えないと野性のシロイズナズナ(上)は全て枯れてしまうが、活性型DREB2Aを導入したもの(下)は75%が生き残った(写真提供・国際農林水産業研究センター) |
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