(独)科学技術振興機構と(独)産業技術総合研究所、東京大学は11月6日、熱によって電子の「軌道ストライプ」(電子が織りなす縞模様)の方向が変わる酸化物結晶を作ることに成功したと発表した。軌道ストライプの方向を熱によって制御することに成功したのは世界初。この成果は、英国の科学誌「ネイチャー・マテリアルズ」電子版の12月1日号に掲載される。
東大の十倉好紀教授らは、結晶中に軌道ストタイプが形成される時、軌道ストライプの方向に対して偏光面が平行の時と直行する時では光の反射特性が大きく異なることを発見した。この現象は、液晶の特性に似ている。そこで、結晶も軌道ストライプの方向を外部から制御出来れば、光デバイスへの応用が可能になるのではと考え研究を進めた。
十倉教授らは、層状ペロブスカイトと呼ぶ結晶構造を持つマンガン酸化物の単結晶を合成し、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設などを使って電子の分布や光反射の偏光特性などの温度変化を詳しく調べた。その結果、この酸化物では97℃以下で軌道ストライプが形成され、室温に近い27℃で方向が90度回転することを発見した。
今後は、軌道ストライプが温度で回転する理由を解明すると共に、光や電場による軌道ストライプの方向制御を目指すことにしている。
No.2006-1
2006年11月7日~2006年11月13日