ブラックホールの謎や銀河団形成の解明に挑む
―6代目X線天文衛星「ひとみ」打ち上げ成功、軌道に
:宇宙航空研究開発機構/三菱重工業(2016年2月17日発表)

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上は、X線天文衛星「ASTRO‐H」を載せたH-ⅡAロケット30号機の打ち上げの瞬間。下は、衛星分離部と結合した「ASTRO‐H」(提供:JAXA)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(株)は2月17日、同日午後5時45分、X線天文衛星「ASTRO‐H」を載せたH-ⅡAロケット30号機をJAXA種子島宇宙センタ-(鹿児島・南種子町)から打ち上げ、約14分後に衛星を分離、遠地点高度km、近地点574.4kmの軌道に乗せたと発表した。最先端のX線望遠鏡と検出器を備えた同衛星は「ひとみ」と名付けられ、謎の多いブラックホ-ルや銀河団の形成過程などのX線観測を11月からにでも開始する。

 

■観測器の感度は10~100倍に向上

 

 「ひとみ」は日本のX線天文衛星としては2015年に運用を終えた先代の「すざく」に続く6代目で、今回は米航空宇宙局(NASA)など世界各国の61機関が開発に参加した国際プロジェクトで、打ち上げ費を含んだわが国の負担は310億円。「ひとみ」の形状は円筒形で、軌道上で展開後の全長は14m、重さ2.7tあり、日本の科学衛星としては過去最大級である。

 「ひとみ」は地球大気に吸収されて地表に届かないブラックホールなどの天体が発射するX線を捉える最新鋭の望遠鏡4台と検出器6台を搭載。これら観測器の感度は「すざく」時代の10~100倍あり、寿命は3年以上とされている。「ひとみ」という名称は衛星が“熱い宇宙の中を見るひとみ”であり、ブラックホールの観測など、X線天文学で最も肝要なミッションになって欲しいとの願いを込めて名付けた、という。

 H-ⅡAロケットの打ち上げ成功は今回で連続24回。これまで30回のH-ⅡAの打ち上げでの失敗は2003年の1回だけで、打ち上げ成功率は96.7%で、国際的な信頼の目安となる95%を上回っている。今回の打ち上げは当初2月12日の予定だったが、悪天候のために17日に延期された。

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