地球深部岩石中に中性水素原子が存在する可能性
―従来の定説「水酸基としての存在」説に一石
:東京大学/物質・材料研究機構/広島大学ほか(2015年2月13日発表)

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地球内部の断面図。上部マントル(および遷移層)と下部マントルは、岩石を構成するケイ酸塩鉱物中のケイ素の配位数の違い(4 配位⇔6 配位)で特徴づけられる。ケイ酸塩鉱物中に、水素は水酸基(=水)として取り込まれているとするのが定説であったが、本研究の結果は、中性水素として存在する可能性を示唆するものだ(提供:物質材料研究機構)

 東京大学や(独)物質・材料研究機構、広島大学、愛媛大学、理化学研究所などの地球科学、物性物理の研究者らから成る共同研究チームは2月13日、地球深部の岩石中に、電気的に中性の水素原子(H0)が存在する可能性を見出したと発表した。水素は水酸基(OH⁻)として存在するという従来の定説に一石を投じるもので、水を構成する地球内部の水素循環研究に新たな展開が期待されるという。

 

■鉱物中に水素の模擬粒子を注入し調べる

 

 水は地球表面の約70%を占めているが、これに加えて相当量の水が地球内部に隠れた形で存在する可能性が指摘されており、これまでは水酸基(OH⁻)の形でマントルに取り込まれていると考えられてきた。

 研究チームは今回、「ミュオン・スピン回転法」という手法を用い、マントルを構成するケイ酸塩鉱物(スティショフ石)中に、水素(H)の模擬粒子としてミュオン(ミュー粒子、μ)を注入し、スティショフ石中にとどまっているミュオンの存在状態を調べた。

 その結果、ミュオンが電子1個を取り込んで電気的に中性なミュオニウムになり、原子と原子の間の格子間位置に存在していることを見出した。ミュオニウムは中性水素原子に相当することから、格子間中のミュオニウムの存在はスティショフ石中の格子間位置に中性水素が存在する可能性を示唆している。

 これは、岩石を構成するケイ酸塩鉱物中で、水素(H)は水酸基(OH⁻)として存在するとしてきたこれまでの定説とは異なっており、研究の新たな進展が期待されるという。

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