長期安定性備えたCNT透明導電膜を開発
―実用レベルの透明性と導電性の両立を初めて実現
:産業技術総合研究所(2015年2月9日発表)

 (独)産業技術総合研究所は2月9日、実用レベルの長期安定性を備えたカーボンナノチューブ(CNT)透明導電膜を作製したと発表した。タッチパネルなどに用いられている透明電極材の酸化インジウムスズ(ITO)に代わる折り曲げできるフレキシブルな導電膜として、タッチパネルをはじめセンサー、フレキシブル太陽電池などへの応用が期待される。実用レベルの透明性と導電性を両立させたカーボンナノチューブ(CNT)薄膜の実現は世界で初めてという。

 

■金属ハロゲン化物を用いたドーピングで課題克服

 

 研究チームは透明性の高いCNT薄膜の導電性を高めるために、これまで硝酸を少量加える硝酸ドーピングを試みていたが、長期間大気中に置くと揮発性成分が薄膜から遊離して性能が劣化するという問題があった。

 今回この硝酸ドーピングの代わりに、ヨウ化銅などの金属ハロゲン化物を用いる技術を開発した。ハロゲン化物の薄膜を透明導電膜素材のCNT薄膜に真空蒸着し、これにパルス光を照射するというもの。

 すると、金属ハロゲン化物のナノ粒子が成長し、CNT薄膜中に移動、導電材であるCNT同士の接点部の接触をナノ粒子が強める働きをする。

 得られた透明導電膜を大気中、室温下で保管した際の導電性の変化を測定したところ、作製直後の性能が長時間保持されることが認められたという。また、透明性も基材の透過率85%と、実用化に十分な透明性を確保した。

 今後は、導電性、透明性をさらに高める工夫をするとともに、全工程を塗布や印刷などのウエットプロセスで作製する技術を開発し、CNTの柔軟な性質を生かしたフレキシブルな用途の開拓などに結び付けたいとしている。

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今回開発したCNT透明導電膜の作製プロセス(提供:産業技術総合研究所)