ハドロン実験施設の放射性物質放出事故で「環境影響評価」
―事故施設に最も近い事業所境界で0.29μシーベルト
:高エネルギー加速器研究機構/日本原子力研究開発機構

 高エネルギー加速器研究機構と(独)日本原子力研究開発機構は5月29日、両機構が共同で運用する大強度陽子加速器施設「J-PARC(ジェイパーク)」(茨城・東海村)のハドロン実験施設で5月23日に発生した放射性物質放出事故の環境への影響についてまとめた「環境影響評価」を発表した。

 

■ほぼ西方の狭い範囲に拡散、希釈

 

 ハドロン実験施設は、強力な陽子ビームを標的に当てて得た中間子などの2次ビームを実験エリアに送って物質の根源が何であるかを探求する最先端の研究施設。
 今回の事故は、ビーム取り出し装置の誤動作で標的の金(縦・横各6mm、長さ66mm)が瞬時に高温となって一部が破損し、発生した放射性物質がビーム取り出し装置から施設内に漏れ、さらに事故後ファンで排気を行なったため放射性物質が施設外にも漏洩したというもの。
 発表した「環境影響評価」によると、事故が起きたのは5月23日の午前11時55分頃。施設内に設置したガンマ線エリアモニタの記録や当時の気象データなどを基に調査したところ、放出された放射性物質は、ほぼ西方向の狭い範囲に拡散し、希釈されたことが分かった。評価の結果、一般環境における最大線量は、ハドロン実験施設に最も近い事業所境界で0.29μ(マイクロ)シーベルト(1μシ-ベルトは1,000分の1mmシーベルト)だったとみている。
 この最大線量は、法令が定める事業所境界の外の年間の線量限度1mmシーベルトより遥かに低いことから「仮に事業所境界に長時間居続けたとしても健康に影響が出るレベルではない」としている。

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