高エネルギー加速器研究機構は4月30日、「Belle(ベル)実験」と呼ばれる大型加速器実験で得た実験データの一部消失事故についての調査結果を発表した。
Belle実験は、つくば市(茨城)の同機構にある世界最先端の電子・陽電子衝突型加速器「KEKB加速器」を使って作り出したB中間子と反B中間子の崩壊の様子を7つの粒子検出器で精密に観測する国際共同実験。その実験データの一部が消失する事故が発生し、昨年12月から発生原因などを検証していた外部有識者をメンバーとする検証委員会の報告書がこのほど同機構に提出され、その内容が公表されたもの。
それによると、データの消失は、23年6月から24年1月にかけて行われた旧計算機から新計算機へのデータの移行作業の際、ファイル選定作業の誤りによって発生した。データ消失で失われたのは、Belle実験の生データの一部など。Belle実験が目指してきた現象に関わる物理データは、複製ファイルなどからの復旧によりデータの相当部分は回復。研究者らは研究上の支障はないとの判断だという。原因について、「個人レベルのヒューマンエラーと、組織レベルでの不十分なチェックに起因する」事故だったと結論。今後について「人間はエラーを起こすことを前提とした組織的、制度的な改善策がとられるべきである」としている。
No.2013-17
2013年4月29日~2013年5月5日