空間反転対称性ある強磁性体でスキルミオン観測
―磁気素子への応用に有用な知見
:物質・材料研究機構

磁気スキルミオンの模式図。矢印は電子スピンの向きを示す(提供:物質・材料研究機構)

 (独)物質・材料研究機構は4月29日、これまで考えられていた条件とは異なる、空間反転対称性が存在する強磁性マンガン酸化物において、ナノ磁気クラスターが「スキルミオン構造」と名付けられた磁気渦構造体を自発的に形成していることを突き止めたと発表した。新たな磁気素子として応用が期待されているスキルミオンについて有用な知見が得られたとしている。

 

■一定の温度で磁気渦が繰り返し反転も観測

 

 スキルミオンは電子スピン(磁気的性質を生み出している電子の回転)が集まって渦状の模様を形成している状態を指す。その形成にはこれまで、空間反転(3次元空間における3軸すべての反転。鏡像反転の3軸版)の対称性がない磁性体に磁場をかけることが必須と考えられていた。
 研究チームは今回、ランタン(La)、バリウム(Ba)を含む空間反転対称性の存在する強磁性マンガン酸化物を合成し、磁化状態を直接観察できるローレンツ電子顕微鏡法という方法を用いて観察した。その結果、ナノサイズの磁気クラスター(電子スピンの秩序的集まり)が観測され、このナノ磁気クラスターの磁気構造を詳細に調べたところ、スキルミオン構造が形成されていることを見出した。
 また、一定の温度で磁気渦が時計回り・反時計回りと繰り返し反転すること、2つのスキルミオンが近接する場合には同じ渦方向に同期して反転することを見出した。
 これらの観察結果はスキルミオン間の相互作用を利用した磁気素子の開発などに役立つ成果という。

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