次世代のダイヤパワーデバイスの高温動作を実証
―ダイオード整流素子で高速・低損失動作を確認
:産業技術総合研究所/大阪大学

 (独)産業技術総合研究所は12月25日、大阪大学の研究者と共同で、次世代のパワーデバイス材料として期待されているダイヤモンド半導体を用いたダイオード整流素子を作製、250℃の高温での高速・低損失動作の実証に成功したと発表した。今回の素子は出力が1A(アンペア)級だが、今後10~100A級の大電流が流せる技術を開発し、ダイヤモンド半導体パワーデバイスの実用化に向けたいとしている。
 パワーデバイスは、発送電設備や電車、電気自動車のような大型電気・電動機器の電力制御に用いる半導体製の素子。最近、ハイブリッド自動車のモーター駆動に使われるなど急速に普及しているが、現在のシリコン半導体製のパワーデバイスは、耐熱、耐電圧、電力損失、電流密度などの面で限界に近付いており、シリコンに代わる新材料の開発が進められている。
 ダイヤモンドはその一つで、熱伝導性や化学的安定性など他の材料には無い優れた特性を持つことから、冷却系がいらない高耐電圧、大電流密度のパワーデバイスの実現が期待されている。
 早くからこの開発に取り組んでいる研究チームは今回、これまでの成果をもとに1A級の大電流容量を持つショットキー型(半導体と金属電極を接合させたショットキー電極を用いた素子)のダイヤモンドダイオード整流素子を作製、その耐熱パッケージには250℃の高温でも作動できるよう耐熱性の封止材を実装した。
 試験の結果、室温から250℃まで素子を加熱しても同様の電流・電圧スイッチング特性を示し、15ナノ秒(ナノは10億分の1)の高速スイッチングと60ナノジュールの小さなスイッチング損失が確認できたという。
 今後は大面積の基板製造技術、低欠陥の高品質膜成長技術、デバイス設計技術などの開発を進め、省エネルギー型デバイスの実用化を目指すという。

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試作したダイヤモンドダイオード整流素子(提供:産業技術総合研究所)