植物細胞の伸び調節タンパク質3種を同定
―背丈や葉・実のサイズが異なる品種の開発に朗報
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は11月19日、植物の背丈や葉、実のサイズを決める植物細胞伸び調節タンパク質を3種突き止めたと発表した。これらのタンパク質の働きのバランスにより植物の細胞の長さが決まることが分ったという。大型作物を作り出したり、珍しい園芸作物を開発したりするなど様々な応用が期待できるとしている。
 植物の細胞の長さは樹高や草丈、葉や実の大きさなどに直接関わっていることから育種上の重要な研究対象であったが、細胞の長さを決める環境要因には日当たり、温度、水、栄養素など様々なものがあり、植物がこれらの環境条件をどのようにして総合的に判断し細胞の長さを決めているかはこれまで不明だった。
 研究チームは、今回シロイヌナズナを対象に、遺伝子の働きをコントロールする機能を持つ転写制御因子を調べ、細胞を伸ばす働きをする2種類のタンパク質(PRE1、ACE)と、逆に伸びを抑制する1種類のタンパク質(AtIBH1)の同定に成功した。
 このうちのACEは、細胞を伸ばす酵素遺伝子の働きを活性化して細胞の伸びを引き起こす機能を持っていた。AtIBH1はACEに結合し、その働きを阻害することで、細胞の伸長を抑制していた。PRE1はAtIBH1に結合し、AtIBH1の働きを邪魔して、ACEの働きが阻害されることを防ぎ、結果的に細胞の伸長を促進していた。
 PRE1は、茎の先端や若い葉、若い実などに多く存在し、AtIBH1は、堅くなった茎の下の方や年老いた葉、大きくなった実などに多く存在していたという。
 研究チームは今後、PRE1、AtIBH1、ACEの働きを部分的に増強したり、阻害したりすることで植物の背丈や葉、花、実のサイズなどを改変する技術の開発を試み、実際の作物育種に応用していきたいとしている。

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