近赤外光を電気に変換できる有機太陽電池を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は11月24日、新しいタイプの有機太陽電池を開発、これまでの有機太陽電池では利用が困難だった波長1μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)以上の近赤外光を電気に変換することに成功したと発表した。有機太陽電池を高効率化する上で近赤外光の利用は、大きな課題とされているが、その突破口を開いたことになる。この成果は、同日、米国物理学会誌のオンライン版に掲載された。
 有機太陽電池は、有機半導体を使った太陽電池のこと。現在主流の結晶シリコン系太陽電池と異なり、軽量で折り曲げできる大面積の太陽電池シートが低コストで作れることから、世界中で研究が行われている。
 しかし、有機太陽電池の効率(光電変換効率)は、まだ7~8%止まりで実用化には更なる高効率化が不可欠な状態にある。その高効率化を妨げている要因の一つが、利用できる光が波長0.8μm以下の可視光領域に限られ、太陽エネルギーの約4割を占めるより長波長域の近赤外光の光電変換ができないことにある。
 産総研は、電子を放出し易い分子(ドナー性分子)と電子を受け取り易い分子(アクセプター性分子)が交互に積み重なった結晶構造を持つ有機半導体に、導電性有機材料の電極を付けた構造の有機太陽電池を試作、波長1μm以上の近赤外光を電気に変換することに成功した。産総研では、素子の薄膜化と多層化を進め、高効率の有機太陽電池を実現したいとしている。

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