(独)物質・材料研究機構と(独)科学技術振興機構は7月27日、セラミックス系に続く第二の高温超電導体の“鉱脈”として注目される鉄系超電導体に化学構造がよく似ていながら、これまで超電導にならなかった物質が70ºCの赤ワインで煮て一晩置くと超電導体に変身することを発見したと発表した。赤ワイン以外のどんな酒でも同様の現象が起きるが、赤ワインが最もその効果が高かったという。
同機構は、酒に含まれる何らかの成分が作用したためと見ており、今後その成分を突き止め、新たな超電導体開発の足がかりにしたいとしている。
実験に使った物質は、鉄とテルル、硫黄の化合物。そのままでは、超電導の性質を示さないが、酒に浸して70ºC程度に温めると、翌日には8K(-265ºC)の極低温下で超電導体になることが分かった。赤と白のワイン、ビール、日本酒、焼酎、ウイスキーと酒の種類を変えて比較実験をしたが、特に赤ワインが超電導体へ変身させる効果が最も高かったという。このため、同機構は、酒に共通して含まれる水とエタノール以外の成分がこの変身に寄与していると見ている。
実験に用いた物質は、2008年以降、次々に見つかった鉄系超電導体とよく似た構造をしているが、それ自体が自発的に反強磁性を示すという「反強磁性磁気秩序」を持っていることが障害になって超電導を示さなかった。ただ、長期間空気中に放置すると超電導が現れることがあるため、同機構は科学技術振興機構の「戦略的創造研究推進事業」の一環としてその原因が何なのかを突き止める研究を進めていた。
No.2010-29
2010年7月26日~2010年8月1日